中年以降の男性の薄毛の特徴は、生え際から頭頂部にかけての部分に集中していることで、側頭部や後頭部の髪の毛はフサフサした状態をキープしているために、コントラストにより一層目立つことになります。ちなみに、これらの内で生え際がセンター部分のみを残した状態で両サイドのみが後退するタイプの薄毛のことは、正面から見たときに生え際部分がアルファベットのMのように見えるということからM字ハゲと呼ばれています。

このM字ハゲの原因は、男性ホルモンのテストステロン（Testosterone）の一部が変化して作り出されるDHT(Dihydrotestosterone)という物質で、正式な症状名はAGA(Androgenetic Alopecia)と言われており、DHTが毛乳頭細胞のAndrogen receptorという受容体と結合することにより、脱毛因子のTransforming growth factorが誘導されることで、成長期の髪の毛が退行期や休止期に移行してしまい、太く長く成長する前に抜けてしまうために、薄毛が進行するという内容です。ちなみに、生え際から頭頂部のかけての部分に薄毛が集中する理由は、この部分の毛根内部にDHTの生産に関与している5αreductaseという還元酵素が存在しているからで、この部分の髪の毛のヘアサイクルが狂わされることになり、通常であれば3年～5年程度は続く成長期が半年～1年程度にまで短縮されるので、該当範囲の髪の毛は軟毛化と呼ばれる状態になります。なお、このAGAの発症には遺伝が関係しており、特に母方の祖父から受け継ぐAndrogen receptorの多型が重要なポイントになり、この遺伝子を受け継いでいる場合は、Androgen receptorのDHTに対しての感受性が良好になるので、通常よりも効率的に結合するために、Transforming growth factorの生産量が増殖し、より広範囲の髪の毛のヘアサイクルが狂わされてしまうことになります。このように、AGAは遺伝により決定されるので、事前の努力により発症を防ぐということは不可能ですが、改善策が何もないというわけではなく、すでに高確率で進行を止める方法は考案されており、市販されている育毛剤の中にもヒオウギエキスやノコギリヤシ、黄金エキスなど効果的な有効成分が配合されている商品が提供されています。

これらの成分は、AGAの原因物質DHTの生産に関係しているⅡ型5αreductaseの酵素活性を阻害するという作用を発揮するので、Transforming growth factorの生産も減少し、ヘアサイクルを正常な状態に回復させるという内容で、再び髪の毛は3年～5年間成長するようになるので、髪の毛に対しての直接的な作用はないにも関わらず、薄毛が改善するという結果につながります。なお、これらのDHTに対して抑制する作用を持つ成分が配合されていない育毛剤は、脱毛症の根本的な原因に対してアプローチしないので、M字ハゲに対しての改善効果を期待することは出来ません。何故なら、新しい髪の毛を作るのに成功したとしても、Transforming growth factorが生産されているために、すぐに退行期や休止期に移行してしまうので、寿命が短いという状態は変わっておらず、すぐに抜けてしまうことになるからです。つまり、M字ハゲを改善したいのであれば原因物質の生産を止めるということが前提条件であり、それと共に発毛を促進させなくてはならないということで、両方の作用を発揮する成分が配合されている育毛剤を使用しなくてはならないということです。